2023-03-09 漂う寂寥感 本のこと 『心淋し川』西條奈加 江戸のどぶ川の片隅の長屋に住まう人たちの生きる姿を描く。 忘れたくても、忘れ得ぬ思いが、人にはある。 悲嘆も無念も悔恨も時のふるいにかけられて、ただひとつの物思いだけが残される。 虚に等しく、死に近いものーーーーその名を寂寥という。 寂寥感漂う心に沁みうる物語。 「歳月とは人の一生だ。誰のどの生にも光と陰があり、時は瞬く間に過ぎていく・・・・」