『花が咲くとき』乾ルカ
札幌で暮らす鬱積をもつ少年と隣に住む指を2本なくしている謎の老人。
老人の貧相な1本の樹を気にかけていた。その木の花芽を削り取る少年。
花が咲くことなどないと思っていた樹に白い花が咲く。
その花をみて老人は旅立つ。ある決意をもって。一方、親と喧嘩して家出するつもりだった少年は、老人を追うことにする。そして二人の長い長い旅が始まる。
少年の好奇心と自分の鬱屈を晴らそうという想いには驚かされるが、行く先々でいい大人に出会うことにより、人を思い遣る心と強い気持ちを持たなければならないなど大切なことを学んでいく。そして老人がなぜ指をなくしてしまったのか。白い花を気にかけていたのかを、旅の果てに知る。
凛と咲く美しい、善き心のような白いクチナシの花。良心の花。